MATO PARENTS JOURNAL
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WHITE
ふたりでシェアするペアレンツギフト
MATO JOURNAL 編集部
ペアレンツびと Vol.04 - PARENTS 夢眠ねむ
MATO by MARLMARLでは、 「マザーズバッグからペアレンツバッグの時代へ」 と題した、社会全体の子育て意識を拡げるプロジェクトを進めてきました。
本シリーズ企画では、自分らしいスタイルで子育てを楽しむ 「ペアレンツ=子育てに携わるすべての人」に光を当ててお話を伺います。
今回インタビューしたのは、2019年にお笑い芸人バカリズムさんと結婚し、2023年10月に第1子を出産した夢眠ねむさん。
夢眠さんはアイドルグループでんぱ組.incを卒業後、東京・下北沢でペアレンツや子どもが気兼ねなく本を楽しめる場として「夢眠書店」を営んでいます。
彼女自身が妊娠や出産を経て気づいた事とは?夢眠書店への想いや周りとの子育てシェアの仕方、普段からペアレンツバッグに入れている物も伺いました。
── 夢眠書店はオープン時から一貫して「子ども連れの方や女性、夫婦のみ来店可」としていますね。夢眠さんの生活も変わりましたが、開店当初から揺らがないポリシーは?
オープン時、私は結婚も出産もしていませんでしたが、夢眠書店をどんな店にするか考えていたときに、友達が「子どもと気軽に遊びに行ける場所がない」と悩んでいる姿を見たんです。そこから「子どもを安心して連れていける場所を作りたい」と思うようになりました。
お出かけ先で子どもが泣いてしまったとき、子どものケアよりも、周りに申し訳ない気持ちが先に出てしまうことがありますよね。夢眠書店では、子どもが泣いても謝らなくていいし、他のお客様も泣き声をBGMとして受け入れています。
同じ建物内に住んでいる大家さんも「泣き声、可愛い〜!子どもが泣けば泣くほど若返る!」と明るく話してくれて(笑)。夢眠書店はペアレンツが安心して過ごせる、守られた空間であってほしいなと思っています。
── 夢眠書店が守られた空間であり続けるために、店主として強く意識していることは?
夢眠書店では、育児の悩みや授乳やデリケートな話も気兼ねなくできるように、男性おひとりさまの来店をお断りさせてもらっています。区別することで、オープン当初は反感を買ってしまうんじゃないかと不安もありましたが、今となっては取り入れてよかった制度だなと思っています。
── 授乳や産後の身体についても語りやすい空間なんですね。夢眠さんご自身が最近出産したことで、店主として変化した部分は?
出産前から子育てをしている方々にヒアリングしていたので、ある程度子どもにまつわる知識を持っているつもりだったんです。でも、実際は知識が足りてないところもたくさんあったことに気づきました。
たとえば、ミルクを温めるお湯が必要なことは知っていたんですけど、その後は人肌くらいの温度まで冷やさなければならないことは知らなかったんです。今は氷を入れたボウルもお声がけいただければ提供していますし、ミルクの適温もわかるのでサッとサポートできるようになりました。
── 細かい部分は、実際に育児をしてみないとわからないこともありますよね。
そうなんです。私は出産直後に授乳クッションを使ったんですけど、これまで夢眠書店には置いてなかったので「不便に思った方もいたかもしれない…!」と申し訳なく思ったんです。でも3カ月くらい経つと授乳クッションがすぐ不要になって、「お店になくてよかったんだ」とわかったり。
今後も自分の子育ての経験と共に「もっとこうしたらいいかも」というポイントが増えていくのかなと思っています。夢眠書店には出産前の方も、子育てが終わった方もいらっしゃるので、お客様同士が交流しながら経験談や情報をシェアできたらいいなと思っています。
── 夢眠さんご自身も、書店での交流が糧になっていますか?
私が子育てを楽しめているのも、夢眠書店のおかげ。お店ではスタッフが交代で子どもを抱っこしてくれたり、お客様と雑談できたりするので、鬱々とした気持ちになりづらい環境ができているのかなと。
── 夢眠書店はお客様同士の交流もありますよね。
そうなんです。その場限りの関係性だからこそ気軽に話せることもあると思うんですよね。
実際、他のお客様の子育ての経験談を聞いたことで悩みを解消できたという声も聞いています。面識のないお客様同士でも「夢眠書店に辿り着いている」という共通点があるので、親近感があると思うんです。
夢眠書店は子どもがいないと入店できないと思われることもあるのですが、そんなことはありません。まだどうするか決めていないご夫婦も、「子どもを産まない」と決断されているご夫婦も大歓迎です。いろんな方が気軽に相談や雑談をできる場所として、大切にしたいなと思っています。
夢眠書店ではカレーやドリンクなど喫茶メニューも充実。ゆっくり食事をしながら、店主や他のお客様との交流が楽しめる。/ ベビーマットには「たぬきゅん」などオリジナルキャラクターのぬいぐるみがたくさん!
── 夢眠さんご自身は、子どもを産むことはいつ頃から意識されていたのでしょうか。
私、結婚する前から子どもを授かりにくいことがわかっていたんです。アイドル時代に忙しすぎて、生理が止まってしまったことがあって。病院で検査をしたら「あなたは数値的に妊娠しづらいですよ」とサラッと言われてしまったんですね。
当時はアイドルとして頑張っていたので結婚も出産も考えていなかったんですけど、帰り道に自然と涙が出てきて。その理由を考えたら「当たり前のように産めると思っていた子どもを産めない可能性があること」にショックを受けたんだと気づいたんですよね。それから「将来的には結婚して子どもがほしいかも」と考え始めました。
その後もアイドル活動で忙しくて何も考えられない状況だったんですけど、「子どもができにくいんだな」というのはずっと頭の片隅にあって。結婚後はすぐに妊活、そして不妊治療に入りました。
── 不妊治療では、大変な思いをされたのでは。
私はこれまで努力をすれば結果がついてくると信じていた人間だったので、あまり落ち込むことがなかったんです。目標に向かって頑張れることが自分の長所だと思っていました。でも、不妊治療がうまくいかなかったときに「こんなに頑張ってもダメなことってあるんだ。しかもこの辛い同じ思いをしている人が世の中にたくさんいるんだ」と衝撃を受けて。
── 終わりが見えないからこそ、つらいですよね。夢眠さんはSNSでも不妊治療中の方へのメッセージに丁寧に返信されている印象があります。
不妊治療はデリケートな話題も多いですし、抱えている気持ちも人それぞれ。良かれと思って言った言葉が相手を傷つけてしまうこともあるんですよね。何も知らないままだったら、当事者の方や、経験をされた方々に不快な思いをさせてしまっていたかもしれない。今まで考えられていなかった部分や気持ちを知れたことで、私は授かる前から「不妊治療をやってよかったな」と思えました。
── つらい不妊治療を経て、妊娠が判明したときは、どんな心境でしたか?
「生まれるまではどうなるかわからない」と思って、浮かれられませんでした。なので、ベビーグッズは予定日直前まで全然用意していなかったんです。でもある日、それが母親にバレて。母親から段ボールいっぱいに新生児用のグッズが届いたことで、やっと「私、産むんだな」と実感がわきました。
── パートナーであるバカリズムさんもお忙しいかと思います。出産後は、どう過ごされましたか?
「最初の1カ月はできるだけ寝た方がいいよ」と周りに言われていたので、パートナーにはプッシュギフト(出産を労うギフト)として、産後ケアホテルをお願いしたんです。産後1週間は入院、その後2週間は産後ホテルで過ごしたので、しっかりと睡眠時間を確保できました。とても健やかに過ごせたので、私が泣いたのは2回だけでした。
── 穏やかな入院生活中に、2回涙が出てしまったのは、どんな背景があったのでしょうか。
1回目は、退院した日にパートナーが「お寿司食べる?」と言ってくれたとき。妊娠中はお寿司を我慢していたので、「念願の生マグロ!わーん!」と、思わず泣きました。
2回目は、産後ホテルに入ったとき。子育てのプロがいる場所ではあるんですけど、退院したことで「いよいよ自分たちで頑張らなきゃいけないんだ」と思って不安で泣きましたね。でも、ありがたいことに泣いたのはトータルで3分くらいです(笑)
── 切り替えと立ち直りが早かったんですね。出産直後から周りと子育てをシェアしていくことは考えていたのでしょうか?
そうですね。最初から「いろんな人の手を借りるぞ!」と決めていました。ひとりで頑張ろう、とは1ミリも思ってなかったんです。
── バカリズムさんはお仕事のスケジュール上、子育てができないときもあると思います。子育てシェアについては、どのように話し合いましたか?
出産のときも、ちょうど彼の仕事が忙しい時期と重なってしまっていたんですよね。なので彼は直接関わることができない分、「子育てにまつわる施設やサービスはどんどん使っていいからね、そのために働いているから」と言ってくれて。すぐにプロに頼れる環境があったので、私も彼も心穏やかに過ごせたのだと思います。
でも、入院中は仕事の合間にめちゃくちゃ会いにきてくれたんですよ。余裕があるときは面会時間中ずっといてくれましたし、仕事で来られないはずの日も1時間だけ来てくれたりして。
── 素敵な関係ですね。それぞれお忙しくされているお二人ですが、いわゆる育児休暇のようなお休みを取ることは考えましたか?
産後ホテルの予定もありましたし、私はパートナーに育休を取ってほしくない派だったんです。そして私も仕事が好きなので、働いていないと不安になってしまう気がして。だから彼には働き続けてもらって、私自身も出産直前までお店に顔を出して、比較的早めに復帰しました。でもこれは、自分のお店で自由が効くからできることですよね。
彼は忙しいけれど、仕事から帰ってきたら子どもにべったり。家にいるときは沐浴やおむつ替えも自然にやってくれるので「もっと子どもと一緒にいたいけど仕事を頑張っている」という気持ちが伝わってきましたし、彼が働いてくれていることで私も安心できました。
── 妊娠や子育てを経て、パートナーとの関係性にどんな変化がありましたか?
「子育て」という同じ目標があるからなのか、妊娠前に比べて仲良くなった気がします。今は自分たちの誕生日も忘れて子どものことばかり考えていますね。「どっちが子どものベストショットを撮れるか」を競って、写真を送り合っています。
── ふたりで楽しみながら子育てをされているんですね。
自分たちでも驚いているんですけど、私たちは子どもの排泄でさえ、嬉しくてしょうがないんですよ。おならひとつで大笑いしてますし、うんちが漏れたとしても「また漏れたかー!」と大盛り上がりしています。
── 夢眠さんが普段持ち歩く、ペアレンツバッグの中身を教えてください。
オムツ、母子手帳、缶の液体ミルク、お湯を入れたジャー。あと私がプロデュースしているキャラクター「たぬきゅん」のパペットも入れています。子どもが初めてたぬきゅんを抱きしめた時には、嬉しくて涙が出ましたね。
── ミルクを温める用のお湯も持ち歩いているんですね。
うちの子はグルメで、冷たいミルクをあげると嫌がるんですよ(笑)。アイドル時代に未鈴(古川)ちゃんに買ってもらったスープジャーにお湯を入れて、飲むときに湯煎で温めて飲ませています。調乳する必要がないので、楽ですよ。
── 夢眠さんは書店でたぬきゅんのグッズも販売していますよね。ベビーグッズに関しても、育児を経てのアップデートはありましたか?
はい。「うちで売ってるベビーソックスは生まれたての子には大きすぎるんだな」と気づきました(笑)。フード付きタオルは、お風呂上がりに便利だなあ、と我ながら感動も。自分に子どもが生まれたことで、グッズへの思考の幅も広がりそうだなと思っています。次は抱っこ紐用のよだれカバーを作りたいな、とか夢は広がっていますね。
── 実現したら嬉しいですね。MATO by MARLMARLでは「社会全体で子育て意識を高めたい」という想いで発信を続けています。最後に夢眠さんから、子育てをしている方にメッセージをお願いします。
みんなで子育てをするのは素晴らしいことです。でも実際のところ、声をかけてくれる方全員が良い人である保証はありませんし、落ち着かないこともありますよね。だからこそ、夢眠書店にいる間だけでも安心して過ごしてもらえるような空間にしたいなと思っています。
深刻な悩みがなくても、ちょっと雑談したり、みんなの暮らしがわかったりするだけで楽になる気がするんですよね。みなさんが気軽に足を運べる行きつけのお店を見つけられたらいいなと思いますし、夢眠書店が子育てシェアの場のひとつになれば嬉しいです。
夢眠ねむが選んだペアレンツバッグ: CONTAINER TOTE BAG
企画:MATO by MARLMARL
編集・取材: 小沢あや(ピース株式会社)
構成: 伊藤美咲
撮影:戸松愛
三重県出身。でんぱ組.incのメンバーとして活躍した後、東京・下北沢に完全予約制の書店「夢眠書店」をオープン。キャラクターユニット・たぬきゅんフレンズのプロデュースも手がける。2019年、お笑い芸人 バカリズムと結婚。2023年10月に第一子を出産。
MATO JOURNAL 編集部
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