MATO PARENTS JOURNAL
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ふたりでシェアするペアレンツギフト
MATO JOURNAL 編集部
ペアレンツびと Vol.09 - PARENTS 我妻三輪子&中川晴樹
MATO by MARLMARLでは、「マザーズバッグからペアレンツバッグの時代へ」 と題した、社会全体の子育て意識を拡げるプロジェクトを進めてきました。
本シリーズ企画では、自分らしいスタイルで子育てを楽しむ「ペアレンツ=子育てに携わるすべての人」に光を当ててお話を伺います。
今回のゲストは、俳優の我妻三輪子さんと、劇団「ヨーロッパ企画」の中川晴樹さんご夫妻です。我妻さんは2019年に第1子となる女の子を出産後、前夫との離婚を経て、2023年に中川さんと再婚。中川さんは初の結婚生活と同時に子育てが始まり、現在は家族として3人で暮らしています。
家族の築き方や暮らしの変化、子育て中の喜びとは? 周りとの子育てシェアの方法や、ステップファミリーになることを考えている人に伝えたいことも伺いました。
── おふたりがご結婚されて、娘さんを含めた3人家族になるまで、さまざまなステップがあったと思います。中川さんは、娘さんとどのように関係を構築していきましたか?
我妻三輪子さん(以下、我妻):晴樹さんは、付き合った当初から娘に会いたがってくれていました。私は「将来をしっかりと見据えてからでないと、子どもと会わせてはいけない」と躊躇していたのですが、晴樹さんが「そもそも、僕と娘さんの相性が合わないと将来のことは考えられないよね」と言ってくれて。
晴樹さんは、まだ3人で会う前から私に娘の話を聞いてくれたり、お土産を買ってきてくれたりしていました。「私たち親子の将来を考えてくれているんだな」と伝わってきましたね。そういった中で私の気持ちも変化してきて「まずは3人で会ってみよう」となりました。
── 中川さんは娘さんと接する上で、何を意識していましたか?
中川晴樹さん(以下、中川):結婚から1年以上経った今でも、娘には気を遣っています。娘にとって僕との出会いは一方的だったし、もともとは他人。距離をいきなり縮めるのはよくないと思ったんです。それに何より、嫌われたくない気持ちが強くありました。仕事で出会った人なら嫌われても二度と会わなくていいと思えるんですが、パートナーの子どもはそういうわけにもいかないですからね。
今では娘とハグもしていますが、つい最近までスキンシップは頭をなでる程度でした。「ハルキがいると寝られない」と言われ、リビングでひとりで寝たこともありましたね。
── もともと母娘2人で暮らしていたところに馴染むまでは、時間がかかりそうですね。
中川:やっぱり、娘と関係を築くのは簡単ではなかったです。嫌な思いをさせないように気をつけるけど、僕も親になった以上、叱らないといけないときもある。娘への接し方は、今でもすごく考えます。
我妻:娘と晴樹さんを会わせる前も後も、どうやって家族になっていくか、たくさん話し合いました。娘は人見知りはするけど、仲良くなったら心を開くのが早いタイプなんです。娘の太陽みたいな天真爛漫な性格に救われていますね。
── 娘さんを大切している気持ちが伝わってきます。娘さんからの印象的な言葉があれば聞かせてください。
中川:娘には実父がいるので、僕のことを“お父さん”や“パパ”と呼ばせるつもりはありません。娘に僕はずっと“ハルキ”と呼ばれているんです。でも、ある日娘が僕のいないところで、お友達に「ハルキって誰?」と聞かれたみたいで。それに娘が「ハルキはパパだよ」と返したみたいなんです。
我妻:私はその場で聞いていて、驚きました。その場で初めて、娘にとって晴樹さんがパパになっていることを知ったんです。
中川:娘の中での実父と僕の存在の切り分け方は全然わからないし、聞くつもりはないんです。でも、彼女なりに父親が2人いることを理解してくれているんだなと思えましたね。
── 家族として 3人で暮らし始めるにあたって、どのような準備をしましたか?
我妻:子育てやステップファミリーについては、本やネットでたくさん調べました。良いことも悪いこともたくさん書いてありましたが、最終的には自分たちが信頼している人の助言を聞くことにしたんです。
私たち夫婦が周りにどう思われるかよりも、結局は娘の幸せが一番大事。よく「親の笑顔が子どもに伝わるから、笑っていた方がいい」って言いますよね。はじめは「そんな簡単には無理!」と思っていましたが、信頼している周りのみんなにもそう言われました。その助言を信じて、私がハッピーになれる方向にいる晴樹さんと一緒に、みんなで楽しく暮らしたいと思ったんです。
── 相談できる人がたくさんいたんですね。中川さんは初婚で、いきなり娘さんができたわけですが、子育てについて周りの方に相談はしましたか?
中川:僕は友達から子育ての話を聞いたり、先輩の子どもを預かったりしていたので、「子どもがいる生活」もなんとなく想像できていました。でも、実際は想像以上に大変なことの連続です。そんなときに先輩から「人生に面倒臭いことがたくさんあるって、実はすごいことだよ」と言われてハッとしたんですよね。今は大変なことや面倒なことも含めて、子育てが楽しいと思えるようになりました。
── 我妻さんは、中川さんとの再婚を決めてステップファミリーになることを打ち明けた際、周りの方の反応はいかがでしたか?
我妻:みなさん、本当にあたたかい言葉をくれました。婚約後、保育園の先生に「これから結婚する予定の方です」と晴樹さんのことを紹介したときも、優しく受け入れてくださいました。友達も、再婚報告をしたらとても喜んでくれました。
ステップファミリーになる選択をしたことで悲しい気持ちになるようなことはなかったんです。晴樹さんや周りの人にたくさん頼れたことも大きかったですが、何より娘が健やかに過ごしているからだと思います。
── 周りの方々も祝福してくれたんですね。
我妻:実は、私自身も、母と血のつながりがないんです。父が再婚したんですよ。今の母のことを、私は「グランマ」と呼んでいます。私はグランマからたくさんの愛をもらっているなと感じているんです。
── 我妻さんご自身も血のつながりのない「グランマ」から愛をもらった経験が、安心して再婚を選択できた部分もあるのでしょうか。
我妻:私がグランマと深く関わるようになったのは大人になってからでしたし、娘も同じように捉えてくれるとは限りません。それでも、ステップファミリーを築くことへの背中を押してくれた経験だったことは事実です。
家族はできているのではなく作っていくもの。そこに血のつながりは必要不可欠ではないと思っています。
── ステップファミリーになったことで、それぞれ暮らしはどう変わりましたか?
中川:「ありがとう」を意識的に言うようになりましたね。僕はずっと一人暮らしだったので、家事も自分でやるのが当たり前。黙って全部やるのが習慣になっていたんです。でも、人と暮らす上では感謝の気持ちを伝えることはとても大事なことですし、親は子どもの見本にならなければならないと思って。
我妻:娘との楽しい時間も、今まで以上に楽しめています。シングルマザーだった時は、遊ぶ役も叱る役もすべてが私。「娘の中で、私だけが正義になっちゃったらどうしよう」という不安がすごくあったんです。でも今は晴樹さんもいることで、心に余裕ができました。
中川:子どもはパッと気持ちの切り替えができるけど、大人は上手く切り替えられないときもあるじゃないですか。僕が娘を怒った後、気持ちを落ち着かせている間に、彼女(我妻さん)が娘と楽しく遊ぶといった役割分担ができるのは、家に大人が2人いるからこそできることだなと思います。
── 分担ができると心強いですよね。 身の回りに、子育ての悩みを相談したり、助けてくれるような方はいますか?
我妻:私たちの仕事の時間が早くて保育園の送迎ができないときは、友達が前日から泊まりに来て、娘を保育園に連れて行ってくれます。いつも優しく話してくれるので、娘も安心しているみたいです。しかも、娘を甘やかすだけじゃなくて、時にはちゃんと怒ってくれて。その友達はもちろん、娘には晴樹さん以外にも血のつながりがないペアレンツがたくさんいるんです。
晴樹さんの両親やお兄さん家族に挨拶に行った際も、正直「どんな反応をされるかな」と少し不安だったんです。でもみなさんが私と娘をすごく温かく迎えてくださって。いとこも娘と遊んでくれましたし。だから血のつながりはなくても、子どもを育てることはできると改めて思いました。
── 周りの方々とも素敵な関係を築かれていますね。
我妻:私はこれまで芸能界しか知らなかったんですけど、ママ友ができたことで、初めて社会の中に入れた気がしたんです。みんなすごく優しいし、きっと娘がいなかったら出会えなかったと思います。娘が私の世界を広げてくれました。
── おふたりが普段、ペアレンツバッグに入れているものを教えてください。
我妻:バッグの中には、お菓子やフィルムカメラなどを入れています。カメラは晴樹さんがプレゼントしてくれたもの。フィルムでたくさん子どもの写真を撮って、いつかアルバムにまとめたいなと思っています。晴樹さんの喉のケアグッズを入れている巾着は、娘が描いたイラストが刺繍で入ってるんですよ。
中川:ペアレンツバッグはモノをたくさん入れられるので、娘の着替えを入れるのにも便利ですよね。今日このバッグを持って登園したら、娘に「なんでバッチつけないの?」と言われたので、今後はバッチがたくさんついてるかもしれません(笑)。
── おふたりは子育てする中で、どんな瞬間に喜びを感じますか?
中川:子どもの成長を見られることですね。本当にものすごいスピードで成長していくんですよ。僕は舞台の仕事をしていて地方出張が多いのですが、2週間ぶりに家に帰ってくると、その間に娘が使う言葉もふざけ方も変わっているので驚きます。子育ては大変ですが、それと同時に「こんなにおもしろいこと、なかなかないだろうな」とも思うんです。これからもっと大きくなっていくことを考えるとワクワクしますよね。
── どんどん語彙も増えていきますし、先週できなかったことが今週できるようになったりしますよね。我妻さんはどうですか?
我妻:娘が健康で生きてくれているだけで幸せです。立派な人間にならなくてもいいから、ごはんをいっぱい食べていっぱい寝て、元気に成長してほしい。その姿を大好きな晴樹さんと一緒に毎日見られることが本当に楽しいです。それに、親も娘から学ぶことがたくさんあります。
中川:子どもは大人の言動をよく見ているなあ、と思うことがあって。僕が娘とお風呂に入っていたら「かか(我妻さん)は頭が悪いと思う」って言ってたんですよ(笑)。「俺はどう?」って聞いたら、「ハルキは本当は頭いいと思う」と。僕らは娘が保育園で習ったことを得意げに教えてくれたときに、「そうなんだ、知らなかった!」と反応するようにしてるんです。けど、本当は僕はもう知っていて、話を合わせていることがバレてるんですよね。
我妻:私は本当に知らないと思われていますね(笑)。
── MATO by MARLMARLでは、「社会全体の子育て意識を高めたい」という想いで発信を続けていますが、そのことについてどう思いますか?
中川:僕は結婚前に友人の子どもを預かることもありましたが、実際に自分が親にならないとわからないことも多かったです。
たとえば電車内のベビーカー用スペースって、広いから立つのが楽ですよね。だから結婚する前は僕も空いてたら立ってしまっていたんです。けど、いざ自分がベビーカーを押す立場になるとあのスペースの大切さが身に沁みたんですよね。
ベビーカーで電車に乗った時に「空いてないな」と思うこともあるけれど、きっとそこに立っている人も、みんな知らないだけなんですよ。もっと配慮すべき点が周知されれば、社会全体の子育ての意識が高まるし、誰もがペアレンツになれると思います。
── 最後に、ステップファミリーの方、またその選択を考えている方にメッセージをお願いします。
我妻:ステップファミリーを構築するのは、簡単なことではないと思っています。私たちは、娘を含めた3人ですごくがんばりました。たくさん話し合ってたくさんぶつかって、その上でたくさん楽しいことをしています。気軽に「ステップファミリーになってみなよ」とは言えませんが、私たちは毎日すごく幸せに暮らしているので、そういう家族もいるよ、と一つのかたちとして知ってもらえたらと思います。
中川:大変なこともありますが、まずはやってみないとわからないですよね。彼女がいうように、時にはぶつかったりケンカしたりしながら、成長して進んでいくしかない。そして、夫婦だけでは解決できない悩みがあったら、周囲のこともどんどん頼っていいと思うんです。きっとみんな「子育てをサポートしたい」という気持ちをどこかに持っていると思うんです。家族と、そして周りの人たちと一緒に楽しんで子育てができるといいなと思います。
我妻三輪子と中川晴樹が選んだペアレンツバッグ:PELICAN BACK PACK
企画:MATO by MARLMARL
編集・取材:小沢あや(ピース株式会社)
構成:伊藤美咲
撮影:戸松愛
俳優
1991年、東京都出身。2002年、ファッション雑誌「ニコラ」モデル オーディションでグランプリを受賞しデビュー。その後は俳優としても活躍。主な出演作に連続テレビ小説「とと姉ちゃん」(NHK)「100 万円の女たち」(TX)映画「きのう何食べた?」「ヒロイン失格」CM「西武鉄道」「SUUMO」など。
俳優・映画監督・構成作家
1977年、愛知県出身。2000年のヨーロッパ企画に参画以降、ほぼ全本公演に出演している。2015年に公開した脚本と監督を務めた短編映画『恋する極道』が、「那須国際映画祭・那須アワード2015」にてグランプリを獲得。
MATO JOURNAL 編集部
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