MATO PARENTS JOURNAL
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GRAY
育児は続くよ、どこまでも
Shigeno Kondo
BORDERLESS PARENTING = 垣根のない子育て
この春、MATO by MARLMARL さんでは
「子育てでつながるコミニュケーションの輪をつくる」
ことをミッションに、
垣根を超えた、未来へと繋がる子育てのかたちを提案しています。
海外で家族と離れて生活する私たちにとって、子育てで繋がる人たちとの輪は実に有り難い存在。
子育て経験の有無に関係無く、世代や文化が違っても、娘にとっては大事なaunties, uncles, brothers and sisters。
皆、それぞれの立場で私たち夫婦と一緒になって、娘の育児に携わってくれている姿を見せてもらえるこの環境は、ともすると、夫婦だけで作り上げてしまいがちな
“こうするべき、こうあるべき”
という意識を取り外し、
自分達らしさってなんだろう?と考えるヒントをもらえる。
そこで今回は、私たちがNZの生活から学ぶ、
“性別の垣根”を超えた子育てについて、
NZの国鳥、キウイバードに
まつわるお話しを交えながらご紹介します。
キウイハズバンドって⁈
キウイバードはNZにしか生息しない国有種。
飛ばない鳥としても有名であり、NZのアイコンのひとつ。
皆さんもきっとご存知のNZ特産のキウイフルーツは、このキウイバードに見た目がそっくりなところから名付けられました。
このキウイバード、
実は子育てに関して私たち人間が学ぶべきとっても興味深い生態があるのです。
それはメスが卵を産み、オスが卵を温めて孵化させるということ。
この特性にちなんでママと協力して子育てに奮闘するパパの姿と、オス鳥が卵の孵化や子育てを手伝う姿とを重ね合わせて、
家事、育児に積極的に携わるNZの男性陣を
“キウイハズバンド”と呼んでいます。
この国の女性陣からしたら
言いたいことは多々あるでしょうが、
典型的な昭和の大家族の中で育った私からすれば、確かにニュージーランドの男性はこまめに動く。
(もっとも、今の日本の男性は父親の世代とは比較にならないほど育児に参加しているけれど)
自ら進んで娘のお世話をしてくれる男性陣の多いことっ!
彼らにしたら娘をあやすのはお手のもので、
おむつ替えから果ては寝かしつけまで、
アタフタの私と夫より幾分もスムーズにこなしてくれる。
つい先日も子守をお願いした先輩ママから、
『私は空いてないけど、パパがいるから任せてOK』
とのお言葉に甘え、娘をパパさんに託す。
(※厳密に言えばお嬢さんのボーイフレンド君も)
用事を済ませて慌てて迎えに行くと、心配せずとも娘は先輩パパの腕の中で抱っこされながらすやすやと眠っていた。
私の抱っこで寝たことは一度もないのに…。
最初はひと様のキウイハズバンドに…
なんて遠慮しながらも、
今ではすっかり、先輩パパさんは大切な助っ人要員。
でもなぜ、
NZには家事や育児に協力的な夫が多いのか?
それには『女性の社会進出』が大きく関係しています。
まずNZの家庭では共働きが当たり前。
もちろん、今では日本の子育て世代の共働きの比率も上がってきてはいるけれど、
賃金格差から見ると、男性が稼ぎ頭となり、
女性が時短勤務かパートでサポートというのが主流。
一方、NZでは女性も会社で
主要なポジションに就いているケースも多く、「男女間の賃金格差」が非常に小さい。
つまり、女性の稼ぎはサポートではなく男性同様に重要な収入源。
こうして妻の収入が多い家庭では、
男性が育児休暇を取得して、
子育てが落ち着くまで主となって
育児を担当するというケースはめずらしくないのです。
その最も象徴的な例としてよく知られるのは、
2018年に任期中に産休を取り、出産したNZの首相であるジャシンダ・アーダーンとそのパートナー。
首相は6週間の育児休暇取得後に仕事に復帰し、その後はパートナーが家庭に入り、主に子供の育児を受け持っています。
そしてこれは政治の世界だけの特別な事例では無く、
実際に私の周りには
子育てを機にパパがキャリアを中断し、
家庭に入って子育てに回ることを選択するカップルも。
こうした身近なロールモデル達から、
私たち夫婦は
“どの家事も育児も誰もが出来て、
そして誰が担ってもいいんだ”
ということに気付かせてもらっています。
ただ、同時に忘れてはいけない大切なことは
子供に安定した生活を提供することも
育児の中の大事な仕事だということ。
子供のためにと毎日必死に仕事に精を出す、
そのあり方は否定されるべきではありません。
であれば、
本来は父親だけがそれを担わなくてもいいはず。
こうした根本的な男女の役割分担
『男は外で仕事、女は家で家事、育児』
からの解放が、NZの家庭での家事や育児のシェアをより可能にしているという背景があり、
男性の労働時間が世界一長い日本の事情とは、簡単に比較できるものではありません。
現在の日本の社会のあり方、
家族構成のあり方では、
『父親』『母親』として期待される役割が
それぞれ社会的に作られているのが現実であり、
その制度(垣根)までを超えて一気に変えていくのは相当なエネルギーを要すること。
そんな我が家も、
夫は仕事で私が家事、育児。
私はちょうど今月から仕事復帰をしましたが、時短での勤務です。
そこで私たちが意識して取り組んでいることは、
一つ一つの役割をどちらが担うべきか、
その都度とことん話し合うということ。
例えば、産休を取るにも
『私が育休を取って家庭に入る、あなたは働いてね』
ということを当たり前にしない。
当然、我が家は夫が稼ぎ頭なので、
今の生活を保つためには夫が働いた方が収入面では大きく安定します。
でも夫には、事前に金銭面での安定性を求めたいのか、それとも
例え収入が減ったり、転職をしてでも
娘と過ごす時間を確保したいのかをクリアにしてもらう。
私自身も産後は収入に関係なく、
育児に集中したいのか、
それともできる限り早く社会復帰がしたいのか、
何度も問い続けました。
生まれたときから寝かしつけとお風呂は夫に
“父親としてこうあるべき”
“母親としてこうあるべき”
という期待される役割から離れ、
自分が親として、1人の人間として、
娘とどう関わっていきたいのかを明確にし選択する。
どこまで行っても正解は無い、
2人の中の折り合い地点をすり合わせていく作業です。
そしてそれは常に変化するもの。
その度に話し合い、調整をし、
二人では無理だと判断した時には仲間を頼り、
ベビーシッターや家事代行など、
社会に在るサポートを利用する必要も。
なんて言っても、
いつも理想通りにはいきません。
でもそれでもいい。
私がこれまでに学んだことは、
性別という垣根を超えた育児には、
自分の中に(そしてパートナーの中にも)ある
“こうしなければならない”
というバイアスに気付き、
そのハードルを下げ続けること。
少しでも、楽に、子育てが楽しい!
そう思えるまでに。
もちろん、これも口で言うほど簡単ではありません。
でも、NZで出会った子育てに参加している男性陣が、
とても楽しく幸せそうで、
そんな彼らを見て、私も私の夫も
育児の分担、親としてあるべき姿にも、
自分らしさを意識する様になりました。
きっと同じ様に、
父親が家事に参加する姿を見せて
子育てをすることで、子供たちは
「家事や育児は夫婦が、社会が協力しておこなうもの」
ということを自然に学ぶようになるのでは、と思うのです。
日本でも、育児休暇を取得し、
国会にも子連れで参加なんていう、
キウイハズバンドな首相が誕生!
なんて新しい時代が早く訪れることを待ちつつも、
私たち自身が次の世代へ発信し続ける
ロールモデルでありたいものです。