MATO PARENTS JOURNAL
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GREEN
夏は、冒険だ。
Taiki Yamanaka
同じ世界を生きていてもまったく異なる世界を感じている、ってどういう感覚なんだろう。
映画『コーダ あいのうた』を観て、そう思いました。
主人公は音楽、特に歌うことが好きな女の子ルビー。
家業である漁を手伝いながら、学校に通う毎日を過ごしています。船の上で爆音で音楽を流しているけれど、聞こえているのはルビーだけ。
彼女の兄、母、父は皆耳が聞こえない聾者なのです。
学校での音楽の授業を通して、音楽への道を志すきっかけと出会いながらも、自分がいないと家族がうまくいかない、、、そんな葛藤とたたかう姿が物語の中で描かれています。
この作品はフランス映画『エール!』をリメイクしたハリウッド映画ですが、原作の愉快なコメディ感も残しながら(赤裸々な描写とか!)、何年も前にフランス版を観たときよりももっと身近なテーマとして映画を見ることができました。
きっとそれは自分が家族をもったから、だと思います。
4人家族のうち、ひとりだけ音が聞こえる。
家族間でのコミュニケーションには手話があるので困らないけれど、社会の中で多くのひとと関わっていくには、”通訳”として家族と社会を繋がなければいけない。
お互いに、家族からの自立がとても難しい境遇にいるのです。
家族だからこそ頼れるけれど、家族だからこそ頼りたくない。
そんな入り組んだ感情が、作品中に溢れこぼれそうなくらい出てきます。
また、音楽も重要な要素。
ちょっと面白いシーンがあって、車に乗っているときにお父さんがhiphopを楽しんでいる姿が出てくるんですが、これは音ではなく音が生み出す低音の響きや振動を体で感じているのです。
でも、娘の声は聞こえない。みんなが涙するほど素晴らしいルビーの歌声がまったく聞こえない。
少しネタバレににってしまいますが、劇中のひとつのクライマックスとも言うべきここぞ!の場面で音がすべて消え、無音の映像が流れてきます。
それはルビーの家族の視点、音風景から描かれたシーンです。
この時のルビーのお父さんの顔がなんとも言えない表情でした。
思えば、映画音楽というジャンルがあるように、現代映画に音楽は不可欠な要素で、たった一部であっても全く音がない映画というのは相当のインパクトです。
ここでは無音が演出のひとつになっていますが、実際にそういう世界を生きている人たちがいるということ。
あのシーンがすべてだったんじゃないかと思うくらい、ここで受け取った感情は見終わった後も映画の余韻として強く残り続けています。
家族って、結局分かり合えないと思うんです。
こう書くと、とてもぶっきらぼうに聞こえてしまうけれど、やっぱり血は繋がっていてもひとりひとり違う人間。
ひとつ屋根の下で暮らし、たまたま過ごす時間が長いから、多くを語らなくても伝わる部分があるし理解できるところがある。
それだけじゃないかなと。
でもだれよりも寄り添っていたいと思うし、支えたいと思うし、応援したいとも思う。不思議で希有な関係性。
アメリカの大学で社会学の教科書を読んでいたとき最初に出てきていたのが”家族の定義”でした。
「社会の中で、最も小さいグループ」
これが家族だと。
チームではなく、グループ。
何が違うかというと、チームはある特定の目標やゴールがあって、それに向かって進んでいく集まりのこと。
グループはある条件によって括られた集まりのこと。似ているようで、全然違いますよね。
家族って、特に目指すゴールもなければ(あるよって家族もいると思います!)、目標達成していくものでもない。
平々凡々とした、それでいて奇想天外で波乱万丈な日々を過ごす仲間に近いかなと。
家族という、人と人が出会って、ごく自然な形で生まれたグループ。
グループでありながら、時折チームにもなってともに歩んでいくこともある。
子供も成長し常に家族という形が変化し続ける中で、我が家もこの変化がもっとゆるやかに、しなやかに出来たらいいなと思います。
そんなことを考えながら、映画に感情移入していました。
家族を外から見るって、とても面白い。
映画『コーダ あいのうた』は今年のアカデミー賞主要3部門にノミネートされ、日本でも現在劇場公開中です。
音楽のセレクトも素晴らしく、名楽曲たちの歌詞をストーリーに沿わせていたところが素敵で、鑑賞後も特にジョニ・ミッチェルのBoth Sides Nowを何度もリピートしています。
ご機会あれば、ぜひおおきなスクリーンで。
『コーダ あいのうた』
大ヒット公開中!
© 2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS
配給:ギャガGAGA
PG12
Taiki Yamanaka
Taiki Yamanaka
Taiki Yamanaka
Taiki Yamanaka